ステファン・シング氏 渡邉尚へのコメント

ドイツのジャグリングを牽引するステファン・シング氏。

20159月、一般社団法人国際新ジャグリング連盟に招聘されて来日、彼のジャグリングワークショップ、及び、彼をゲストとして迎えたジャグリング競技会が行なわれました。

その双方に参加していた渡邉尚を目撃したステファン・シング氏自身から、渡邉のジャグリングについてコメントをいただきました。

原文と日本語訳、合わせて掲載させていただきます。


“I’m used to teach jugglers who are starting to dance, but it’s very rare to teach dancers who started to juggle. I was very impressed about the freedom of the movements by hisashi. Normally the objects are giving the limits to the body, but with hisashi it was not like this – his body was giving the power and the directions to the objects. The “using of the head“ by hisashi was just an example – jugglers don’t want to move the head, because it’s very difficult to see and control the objects with a slanted head; but a movement without the head is just a half movement – but hisashi didn’t care and for me this was a never seen holistic connection of objects and the body. 

Another example was the behaviour with drops. I was feeling no fear of dropping with hisashi, because it’s not about drops it’s about the created energy – and the joy of a drop, which gives you a new not expected possibility to move.

I’m very curious to see to where hisashi will go.”

  Stefan Sing,    

  September,2015


<日本語訳>

 今まで私は数多くのワークショップをしてきましたが、その中で、「ダンスに興味を持ったジャグラー」というのは見たことがあっても、「もともとダンスをしていた人がジャグラーになった」という例はほとんど見たことがありません。

 驚くべきは、渡邉尚が「いかに自由に身体を動かしているか」ということです。ジャグラーの一般通念としては、「モノが身体になんらかの制限を与えてしまう」のが普通です。しかし渡邉尚に限っては、そうではない。

 つまり、彼の身体そのものが、物体に力、方向を与えているのです。たとえばそれは、彼の頭部の使いによく見て取れる。ジャグラーは一般的に、頭を動かさない。それは、モノをよく見るためであり、頭が動いていては、ロクにモノを見ることなどできないからです。しかし考えてみると、「頭を動かさない身体の動き」などというのは、身体を半分しか使っていないようなものです。そこに来て渡邉尚は、モノの軌道を目で追うことなど気にもとめず、動き回ります。これは、前代未聞の、モノと身体との関わりかたです。

 他にも、ドロップをした時の反応。彼のジャグリングを見る限り、ドロップにハラハラするようなことは決してありません。逆にそこに見えるのは、新たなエネルギーです。ドロップをかえって「喜ばしい」ものとして受け止めることで、そこに、全く予期しなかった新しい可能性が生まれているのです。

 渡邉尚がどこへ向かっていくのか、非常に楽しみなところです。

   ステファン・シング 2015年9月         (訳・青木直哉)